こいつは最高の芸人だぜ!

東大戦(東大から見たら京大戦ね)を前に、盛り上がってまいりました!

京大ボート部同期のたらちね草山@KNJksymが東大との対校戦に出場する後輩に送った文章が素敵すぎて、もう5回くらい繰り返して読んでいます。
ボート競技に熱中する全ての大学生に読んでほしい。

全文書き起こし

無意味の意味

第61回大会 草山 公汰 (平成21年入学)

一昨年にもOB 執筆の依頼を受けていたのですが、今よりも不安とリスクの大きかった当時の事情もあり2020年は東大戦が規模縮小での開催となりました。 いわゆる「不要不急」というやつです。 

私は平成21年に入学入部し、漕手としてはバウサイドでした。その後マネージャーとなって主務を務め、引退後は大学を中退して芸人をやっているという、およそ最も見習うべきではないOB かもしれません。

2020年は我々芸人もほとんど仕事がなくなりました。ライブもイベントも営業も全部なくなって、家で屁をこいているだけの日々でした。人命とてんびんにかければ、東大戦もお笑いも 「不要不急」です。 そりゃそうです。

東大戦の思い出を話しましょう。平成22年は瀬田開催の東大戦で、私は 4+ に乗っていました。当時、東大戦のクルーは髪を派手な色に染めるというノリが毎年ありましたが、私は髪の量が少なかったのでスキンヘッドにしました。

本番当日。 懸念されていた川の藻類も排除され、クルーも練習通りの実力を発揮し、万全の態勢のなか、ちゃんと実力通りに敗北しました。艇庫に艇をもどして洗っている間もプログラムは粛々と進み、対校エイトが出艇して華々しく見送られている声援だけが聞こえるなかで、情けなく泣きました。悔しさとコーチやサポートしてくれた人たちへの申し訳なさで、本当に中から押し出されるように落涙したのを今でも思い出します。

その当時の同期とはいまだに仲良く、関西に住んでいる面々とは今も食事をしたりします。大学の知人のなかで、ここまで関係が継続しているのはボート部くらいです。

たしかにボートなんて、東大戦なんて、見方によっては「不要不急」かもしれません。でも、だからこそ本気になれるんです。だからこそ輝きを失わないんです。

今大学生活を謳歌している皆さんも、社会に出れば職場や家庭やいろんな場所で責任を負うものです。義務の鎧が肉に食い込み、意味に追われて骨が悲鳴をあげるときに、ふと心のよりどころになるのはかくも貴き不要不急なのでしょう。コミュニケーションも感情表現もあまり上手でない自分に、今だ絶えない絆と声を上げて泣いた経験をくれたのは、今のところポート部くらいなのです。

皆さんのことですから、身の回りには理知的な友人も多いかと思います。中には「もっと有意義で将来役に立つことをやった方がいい」なんて言ってくる人もいるでしょう。ええ、ボートなんて 将来ほとんど役に立ちませんよ。それを履歴書に書いて就職で有利になることもないでしょう。ゴルフでもやってた方が職場の上司に気に入られるかもしれませんね。でもこう言い返してやりましょう。「合理的なことなんて、後からいくらでもできる」

夢中になってください。 6時から塾にいかないと行けない子どもが、5時59分までやっている鬼ごっこのように夢中になって下さい。「早く支度しなさい」と怒っている保護者を尻目に、それでもなお玉の汗を流すように夢中になって下さい。オールの重み、クルーとのいさかい、水の反射。それは全てのOB・OGがもはや羨むことしかできない極上の不要不急です。勝つことができればもっと最高でしょう。両校の健闘を楽しみにしています。無意味なことで生計を立てているOBより。

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